福助(ふくすけ)

富山県の黒部の山間部で雪深い処の庄屋であった築百年以上の古民家を、散居村で有名な砺 波平野へ店舗に活用した古民家の移築再生。

【移築前】 豪雪のために屋根が落ちて、 倒壊寸前の状態。

この古民家は久しく空き家となって放置されていたこともあり、豪雪のために屋根が落ちて 全壊状態になってしまった。誰もが諦めるほど無残な姿となって見捨てられようとしていたが、 倒壊寸前にも関わらずその逞しい骨組みはそれでも力強い生命力を感じさせた。

【移築前】移築前の状態

我々は先人の 職人の技術によって吹き込まれている生命力を信じ、移築再生が可能であると判断して、これ 以上古材が痛まないよう雪解け早々に解体を始めたが、大きく破損して再利用が出来ない部分 や、店舗として適切な規模にするため、やむなく三分の一程度にして原型を変えることになった。 古民家は地域によりその姿は著しく違うので、活用する軸組みから素直に形成される外観や 間取りを模索しながらも、移築先の砺波地方の風景に馴染むように努めた。

福助(ふくすけ)
【移築後】現在は 「手打ち石臼挽き蕎麦 福助」として営業している

同じ場所に使えな い古材や造作材は出来るだけそのまま再利用し、天井板(神代杉)は建具に、不要な板戸は格 子戸などに改造をして活用して殆ど使い果たした。古色においては、北陸では以前には良くあっ たように、建物内部の木部全体を北陸の地域ブランドである「漆塗り」に仕上げて地域の特色 を際立たせた。十分な調査が出来ないまま解体をしたこともあり、全てが古材を確認しながら の現場合わせであったが、職人達は遣り甲斐を感じて忍耐強く作業をしてくれた。

北陸の過酷な気象条件を考慮し、気密断熱を高めて省エネで快適な住環境にしたので吹き抜 き空間ばかりにも関わらず、お客様には快適に食事をして頂いているようである。店主は2代 に渡り収集した骨董や民芸品を展示する民芸館を兼ねた店舗にして、懐かしさを感じる「癒し」 の空間で食する「こだわりの蕎麦」をコンセプトにしていた。本来、古民家はそれらを日常生 活に溶け込んだように展示するには最適であり、お客様の評判も大変良く繁盛している様である。

福助(ふくすけ)
【移築後】石材は古民家で使われていた ものを再利用した。

古民家は限りある貴重な文化的資産であるにもかかわらず、戦前では一般的であった古民家 再生の専門知識の不足から数多くが取り壊されている。古民家の移築再生で地域の民家を再構 築することは、古民家の保存活用の可能性を高め、伝統構法の継承と戦後失われた日本のアイ デンティティの再認識に繋がり、また、愛着を持って長く大切にされる建築は伝統美と地域性 のあるスタンダードなデザインが基本であると考えている。

今回は、この建設会社の確かな技術力により、瀕死の古民家に命が吹き込まれた。凛として たたずむ蕎麦「福助」を前にすると、我々は建物の医者としての役割を全うした喜びを感じる。

移築後の福助

建築DATA

受賞JIA優秀建築選2010、富山県建築賞受賞
所在地富山県砺波市林
敷地面積 1744.08 m²
建築面積 255.13 m²
延床面積 235.06 m²
建ぺい率 14.63%<60%
容積率13.48%<200%

手打ち石臼挽き蕎麦 福助

お蕎麦の魅力を存分に味わって頂くために、玄蕎麦と対話するように向き合いそれぞれの個性を季節や天気にあわせ生粉打ち又は、九割でそば切りしております。やわらかな緑と古民家のたたずまいで、互換に潤う豊かなひとときをお楽しみください。

■営業時間/午前11:30~午後2:30
 午後5:30~午後8:30(ラストオーダー8:00)
■定休日/月曜日
 祝日の場合は営業いたします(翌日休み)
■住所/〒939-1345富山県砺波市林947-1
 TEL・FAX/0763-33-2770


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